“HONESTY”
-誠実-
僕らが作り出すものは、針や糸という原始的な道具で作られています。指先を動かす順序や力加減を変えることで幾重にもパターンは広がるものの、たくさん作ることができず、常に個体差があり、非効率と紙一重の作り方でもあります。
僕らが作るものは、人の営みそのものとも感じます。
試行錯誤し、時に失敗し、日々新しいものを作り出す。手に手を介して一つのものを作り上げる。健康で実直な姿勢があり、そこには確かな感触や実感があり、誠実な精神を持って作られる美しさがあると信じています。
僕らが未来へ繋げていこうとしているものは、この小さな地域に伝えられてきた技術であり、その姿勢であり精神でもあります。400年という時を経てきた浴衣や着物を彩った様々な柄や型紙と対峙する時、先人らの叡智や技術、生活に寄り添う美意識に触れ、何とも言い尽くせぬ不思議な気持ちにもなるのです。
情報が行き交い速度を増す社会の中で、この静かな地域に根ざした誠実な精神は僕らに立ちかえる道標として歩むべく方向を指し示してくれます。
ひとつ、ひとつ。大切に作り、大切に使うという当たり前のこと。僕らはこの誠実さを胸に、今日もひとつ、またひとつ、ものを作ります。
suzusan クリエイティブ・ディレクター
村瀬 弘行