“CYCLE”
毎朝自転車で家からアトリエに通っている。
その道すがら公園を通り抜ける。
夏には木々が緑の葉を揺らし、秋には歩道に落ち葉が積もって
車輪の下にカサカサという音を立てて、冬は芝生に白い霜が光る。
特に春は鮮やかで、無数の蕾が膨らみ、その後花が色とりどりに咲く。
世界の凄惨な状況とは裏腹に自然の移ろいはいつもと変わらず、日々絶えず変化して、
この循環は僕に毎朝彩りと発見を与えてくれた。
自然の中の循環に、人の成長を重ね合わせることがある。
コイル状のスパイラルで円を描くように、そのサイクルの中で元にいた場所に戻れど、
自分自身の形や考えは変化して戻る。
場所と時間が動きながら、つながり、離れ、元いた方向に向かい、
次の場所へ新しい円が描かれる。
前回日本に行った時、2年ぶりに帰る有松では、変わらない町並みと、
子供のころから変わらず同じ笑顔で迎えてくれる人々がいた。
「最近手が動かしにくくなってきた」という絞り職人のおばあちゃんは、
若い人たちに80年続けてきた技術を伝えようと頑張っていた。
蕾が膨らみ、花弁が開き、枯れて風に吹かれて散るように、その一つ一つに意味があり、流れる時間があってその次の形をつくっていく。
ものを作ること。人が成長すること。その営みも自然のサイクルの中に合って、次の種になって続いていく。
suzusan クリエイティブ・ディレクター 村瀬弘行